建物のメンテナンス費用とは?


住宅を購入する時、絶対に考えておかなければならないのが、「メンテナンス費用」です。

快適で清潔な住宅を維持するためには相応の費用がかかります。その費用はどんな家を建てるかによって全く違ってきます。住宅ローンの返済だけではなく、この費用は想像以上に家計に影響します。

一部の住宅メーカーは生命保険会社の営業社員による「FP相談」を開催していますが、建物のメンテナンス費用を現実よりも低く見積もっていたり、ひどい場合は全く無視をしていることさえあります。
メンテナンス費用を低く見積もれば、住宅ローンを借りる額が安いほど家計が楽になるように見えます。しかし現実はそう甘くはありません。

では、どんな費用が必要なのでしょうか。

・屋根の塗装、葺き替え、雨樋の補修

・外壁の塗装、コーキング(またはガスケット)、サイディングの張替

・ベランダの防水

・防蟻処理

・フローリング、内装クロスの補修・張替

・サッシの交換

などが定期的に必要になります。


特に屋根と外壁のメンテナンス・コーキングは10年~15年ごとに100万円~200万円程度の出費となります。メンテナンスを先延ばしすることで家の躯体への悪影響があり、建物の寿命を短くする危険があります。

さらに40年後には

・建物の解体・建て替え

も必要になるかもしれません。40年ローンを借りてもいい耐久性の家かどうかを気にして検討する方は多くありません。もし30年で解体を余儀なくされたら、残りの住宅ローンはどうなるでしょうか。

メンテナンス費用はどんな建物を、どこの会社で建てるかによって違ってきます。家の予算を決める時に、絶対に欠かせない要素の一つです。


設備の交換について


建物のメンテナンスと同様に必要なのが、住宅設備の交換費用です。

例えば次のようなものが必要です。

・エアコン交換

・エコキュート・ヒートポンプ交換

・パワーコンディショナー・蓄電池交換

・太陽光パネル交換

・床暖房設備の修理・交換

・換気システムの修理・交換

・キッチン、バス、トイレの修理・交換

・FF式暖房機器、石油給湯器の交換

近年、住宅設備はハイテク化、複雑化していますので、比例して定期交換が必要になる設備・部品も増えています。省エネルギーを謳うものが、必ずしも家計に優しいとは限りません。

残念ながら壊れない設備はありません。10年、20年という短いスパンで買い替えを予定する必要があります。

住宅営業マンが「半永久的」だとオーバートークをしているケースも散見されますが、設備にはそれぞれ製造メーカーが想定する寿命があります。修理しようとしても部品の供給が終われば、そこで寿命となります。

設備の寿命と費用も含めて家づくりの予算です。

繰上げ返済はした方がいい?


書店に行くと、住宅ローンの借り方返し方について「ファイナンシャルプランナー」が書いた本がたくさん売られています。

そのほとんどに「繰り上げ返済が重要」と書かれてあります。ごく一部には「繰り上げ返済は不要、その代わり投資をしましょう」と書いてあるものさえあり目を疑います。

実際のところどう判断するべきかと当事務所にご相談される方がたくさんいらっしゃいますが、繰上げ返済をする・しないの判断は「その家庭による」というのが正解です。

繰上げ返済には次のような特徴があります。

・繰上返済をすると利息は節約されるが、手持ちの現金は無くなる

・繰上返済の時期によっては利息の節約の効果は薄い

・繰上返済によって減税メリットが無くなることもある

・繰上返済による利息の節約を利益と見なすと、確実に効果が出る

・住宅ローンには団信(死亡やがんに備えた生命保険)がついていて、繰上返済をするとこれが無くなる

・変動金利の場合、金利が上昇した時に繰上返済をするとリスク回避がしやすい

などの特徴を自分の家計に当てはめてみて、いつ繰上げ返済をするべきか検討するのが現実的です。金利が何パーセントになったら、子供の進路がこうだったら、などの条件が揃った時に繰り上げ返済をするという方針を計画しておくことをお勧めします。

これは自分で計算することは困難です。相談会でプロにお任せください。

「繰上げ返済は不要、その現金があるなら投資で増やしましょう」という勧誘を受けることがありますが、安易に契約するのは危険です。投資額全額を失った場合にも家計が成り立つかどうかを判断して、リスクを承知の上で自己責任で実行する必要があります。

繰上げ返済の原資は「生活費」です。リスク性のある保険や投資に向けてもいい「余裕資金」ではありません。



自己資金(頭金)は必要?

住宅購入を考える時、多くの方は「頭金を貯めなきゃ」と考えます。頭金のことを専門用語で「自己資金」と呼びます。この自己資金はいくら貯めるべきなのか、悩むと思います。

住宅メーカーの営業マンは「自己資金なしでも建てられます」と言うことが多いのが現状です。実際、多くの方が購入価額のほとんどをローンで買っています。自己資金なしで買う場合、どんなメリットとデメリットが考えられるでしょうか。


【自己資金を用意せずに今すぐ購入するメリット】

・一年でも早くローンをスタートできる(完済時期が早くなる)

・現在の金利が底で、これから上昇するとしたら、元金が多い時期に安い金利で返済できる

・アパートの家賃を払う期間が短くなる

・年末の融資残高を高く維持することにより減税メリットを活かせる(厳密には各ご家庭の状況で異なります)

・健康状態が良好なうちに条件のいい団信(三大疾病付など)に加入できる


【自己資金を用意しないデメリット】

・フラット35の場合、金利が高くなる

・将来借換えをする場合、家の価値に対して残債が多く借りられない場合がある(担保価値に対する融資率オーバー)

・銀行の審査が厳しくなる・金利が高くなる

・毎月の返済額が高くなる

などが想定されます。出来る限り、諸経費分程度(300~500万円程度)は用意すると安全です。しかし現在の年齢や年収の事情などで貯まるまで待たないほうがいいケースもあります。

「頭金なしでも建てられますよ!」という営業マンの言葉を鵜呑みにせず、ライフプラン相談会で判断してください。

相談会でいくつかのパターンでシミュレーションを繰り返し、最善の方法を探すことができます。


40年ローンについて

40年ローンは長すぎる?

ここ数年、返済期間40年の住宅ローンが増えてきました。すでに多くの方が40年ローンを利用していますが、期間の長さに抵抗感がある方もいるのではないでしょうか。そこで長期ローンのメリットとデメリットを分けて考えてみます。

【デメリット】

・同じ金利であれば返済期間が長い方が支払う利息が多くなる

・40年間で金利が大きく変動する可能性がある

・定年退職後にまとまった貯蓄がなければ返済は困難になる

・公的年金だけの収入ではローン返済は困難

・「収入が低いので返済期間を長くしたい」と考えている場合は、家計を見直すことと借入額を少なくすることが先決


【メリット】

・返済比率が下がり、より多くの借入が出来る

・より多く借りることで寿命の長い高性能住宅を買える

・子供の教育費がかかる期間に、返済額を抑えることができる

・住宅ローン減税期間の減税枠を大きく取ることができる

・家計にキャッシュ(現金)を残すことで緊急出費に対応できる

・毎月の返済額を抑えることで、収入減などのリスクに対応しやすくなる


損得だけで言うと、当然返済期間は短い方が利息は少なく済みます。精神的な負担も短い方が楽でしょう。

しかし短い返済期間を望んでいても、収入による銀行に審査で認められないことがあります。年収に対する年間の返済額の上限(返済比率)が決められているからです。上限に近づくと「無理な返済計画」と見なされてしまいます。

利息を節約したいがために短期間の返済計画を組み、自動車を現金で買えず金利の高いマイカーローンを借りたら元も子もありません。最近は残価設定ローンという特殊な返済方式の自動車ローンが増えましたが、金利の仕組みと総額を知ると不利な取引であることに気づきます。今後自動車を何台買うのか、その金利の合計はいくらかを計算してから住宅ローンの返済年数を検討するべきです。

住宅ローンの利息だけが節約できても生活は楽になりません。

返済期間を短くするために建築費用を極端に低くしてしまうと、今度は住宅の耐久性に不安が出てきます。メンテナンスや設備の交換に費用がかかる家を買うと、利息以上の負担が待ち構えています。

住宅ローンの返済計画は、感情論的な判断ではなく、相談会で緻密に何度もシミュレーションをすることをお勧めします。


金利の上昇にどう備える?

住宅ローンの金利がこの数十年の中で最も低い数字を記録しています。「今が買い時ですよ」とはよく耳にする言葉かと思います。

住宅ローン商品の金利には大きく分けて三種類があります。

・全期間固定金利

・固定(金利)期間選択型

・変動金利

この中でも、最も金利が安い「変動金利」が現在多く利用されています。文字通り、金利が常に変動するというローンなので、不安に思うかもしれません。

この変動金利の特徴は、

・金利が半年に一度見直される

・しかし返済額は5年に一度だけ見直される

・月の返済額の変動幅は、従前の支払額の1.25倍まで

・金利が上昇し続けると最終的に未払い利息が発生する

と少しややこしくなっています。

変動金利で借りる時には、現金での貯蓄が出来ると安全です。金利が大きく上昇した時は、返済額は抑えられているものの利息を多く支払う状態になります。この時、「一部繰上げ返済」という方法を取れると、元金に繰り入れられ、利息を押さえることが出来ます。

(※難しい計算なので相談会で詳しく説明します。)

金利というのは面白いもので、3000万円を3%で借りても、1000万円を9%で借りても、翌月に支払う利息は同じです。金利が上昇した時に利息が膨らまないようにするには、元金を早いうちにどれだけ減らせるかが鍵になります。そのためには現金での貯蓄が出来る家計に改善することが必須です。

現金での貯蓄が難しい家計の場合、変動金利はお勧めできません。

一方、全期間固定金利のローンは、変動金利よりも金利がやや高く設定されています。これは高い利息を支払って金利変動のリスクを避けるということです。事情があって貯蓄が見込めない方は変動金利よりこちらをお勧めしますが、そもそも貯蓄が出来ない家計状況で住宅ローンを借りるのはリスクが高すぎます。

相談会で家計の改善をアドバイスできますので、ぜひご利用ください。


団信の適用条件に注意

住宅ローンを銀行から借りると、同時に「団体信用生命保険(団信)」の手続きをします。

これは債務者(ローンを借りる人)が亡くなった場合に、ローン残高が0円になるという生命保険です。(銀行が生命保険会社から死亡保険金を受け取るという仕組み。)

最近はがんを診断されたらローン残高が0円となる「がん団信」や、がん・脳卒中・急性心筋梗塞という3大疾病を保障する「三大疾病団信」、さらに糖尿病などの慢性疾患や就業不能状態を対象に保障するものまで、幅広くラインナップがあります。

保障内容が大きくなるほど追加金利が上乗せされます。

安心のために大きな保障を選びたくなりますが、この団信が適用になるためには厳しい条件があります。

例えば就業不能状態を保障する団信の場合、就業不能の定義はとても厳しいものになっています。「1年間の連続した入院、または医師の指示による在宅診療かつ所定の障害状態であること」という意味のことが約款に書かれています。医師に休職を勧められて自宅で療養していた、というだけでは診断書があっても適用になりません。

また、もし将来住宅ローンを借り換えたいと思っていても健康状態が悪ければ、借り換える銀行でガン団信などを選ぶことが出来なくなります。

数百万円分の金利を上乗せするほどの価値があるかどうか、冷静に判断するお手伝いを相談会でしています。


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